| 津和野殺人事件 |
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山陰の小京都・津和野、ここで隠然たる勢力を誇る旧家・朱鷺家には、ある秘密が隠されていた。一族をめぐる連続殺人!名探偵・浅見光彦は、「赤いトンネル」の記憶に呼び寄せられたと語る樋口母娘と出会い、ともに奇怪な陰謀に巻きこまれていった…。連続殺人の謎と意外な犯人像!? 憂愁の気配漂う津和野を旅し、深い感銘を与える旅情ミステリーの傑作。 光文社文庫(本のカバーから引用) |
| 津和野殺人事件 | 土田さん |
| 雪江未亡人によって発見された朱鷺勝蔵は、津和野では「朱鷺様」と呼ばれる名家の人間だった。 この作品を読んで、日本の「家」ということについて考えさせられた。詳しいことは知らないのだが、かつて日本には「家長制度」というものがあったらしい。現在そのような制度はなくなったものの、その名残があちらこちらに残っているのではないかと思う。 私は、ものぐさで、面倒なことは嫌いな方なので、いわゆるしきたりや慣習などはない方がよいと思っている。私が生まれた家が名家ではなかったので、名家に対してのひがみもあるのだろうが、「家」よりも「個人」が尊重されてもよいのではないのだろうかと思うことがよくある。 この作品でヒロイン役の樋口実加代やその母久美は朱鷺家存続あるいは朱鷺家の名誉を守るための犠牲者である。また、命を落とした(奪われた)勝蔵、神津洋二、木本レン、そして自らの命をたった日隈啓子もしかりである。 そして何よりも悲しいと思ったのが朱鷺友義と杉森依子の恋が成就しなかったことである。この世に悔いを残しての戦死だっただろう。友義が朱鷺家の子孫でなければ、なんの問題もなく愛する依子と生活をともにしていたはずだ。赤紙がきて、同じ戦死するにしても、夫婦として認められていたなら思い残すこともなかったと思う。 今でも、「家柄が違う」とか、「身分不相応」という理由で、結ばれない男女がいるのではないだろうか。とても不幸だ。 幸い私の場合は、たいした家柄でもないが、そんなことを気にしなくてもいいような相手と巡り会えた。自慢にはならないが、結納などの手続きも省略、披露宴もやっていない。 光彦も、大蔵省のお偉方の父上、警察庁刑事局長の兄上を輩出している「浅見家」という、素晴らしい家柄の人間である。そんな家柄でありながら、フリーのルポライターをしているあたり、「浅見家」という名に対して反発しているところがあるのではないかと勝手に思ったりしている。
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