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ミステリーについての一考察

 島田荘司の「本格ミステリー宣言」が届くまで、まだ時間がかかりそうなので、その前に20世紀初頭に活躍したイギリスのミステリー研究家ロナルド・ノックスが書いた「探偵小説十戒」を紹介します。

1 犯人は小説の初めから登場していなければならない。また、読者が疑うことができない人物であってはならない。

2 犯人追及の方法に、超自然の力を用いてはならない。

3 秘密の通路や秘密の部屋を用いてはならない。

4 科学的に未確定の薬物や著しく特異な薬物を使ってはならない。

5 中国人を登場させてはならない。

6 偶然の発見や探偵のヤマカンによって事件を解決してはならない。

7 探偵自身が犯人であってはならない。

8 読者の知らない手がかりによって事件を解決してはならない。

9 ワトソン役は、彼自身の判断を包み隠さず読者に知らせねばならない。

10 双生児や変装による二人役は、あらかじめ、それを匂わせておかなければならない。

このうち、5の中国人は正体がよくわからないと思われていた時代の偏見ですが、その後はまあまあと思われます。

7の探偵自身が犯人だったというのは、最近読んだ「悪魔の紋章」(江戸川乱歩)がまさしくそうでした。
あ、それと「後鳥羽伝説殺人事件」もそうでしたね。県警の桐山捜査主任が殺人犯だったのです。

4の薬物に関しては、これも最近読んだ「ミステリーを科学したら」(由良三郎)によると間違いがずいぶんあるようです。

よく青酸カリが使われるのですが、これがどうやって人を殺すかについては、案外知られていないようです。青酸化合物が嚥下によって劇薬となるメカニズムは、これが胃に入ると、胃液の酸性にあって瞬間的に加水分解が行われ、青酸ガスが発生し、そのガスを胃壁粘膜がよく吸収し、血中に入るから呼吸中毒となり、急激に死に至らせるということです。つまり、注射して体内に入れても人間の血液は弱アルカリ性なので死には至らないということです。

6の偶然の発見や探偵のヤマカンによって事件を解決するというのは、よく見られるような気がしています。

それと、つけ加えると証人がよく観察して覚えていると感心することがあります。顔立ちから服装、持ち物など実によく覚えている。実際そんなに詳しく覚えているだろうか?と疑問を感ずるときがあります。

[参考図書]
「ミステリーのおきて102条」(阿刀田高)
「ミステリーを科学したら」(由良三郎)

1998.12.16記