痛みの生理

 

1999.4.24記 

青森県のDr.小田正博さんのHPから引用させていただきました。
http://www.hi-net.ne.jp/~ma/

痛みの生理

痛みは日常いつも経験します。ドアに額を打ったときやナイフで手をきったときには痛いですね。
虫歯の痛みはがまんができません。
そして、お腹に虫垂炎のような炎症があると右の下腹部が痛んできます。どうしてこのような痛みがでてくるのでしょうか?

1,痛みとはなんですか?

人の体には神経がはりめぐらされております。
そのはじっこになにかの刺激が加わるとそれがすぐに大脳皮質に連絡するようなシステムになっております。

それがある程度の強さの刺激なら大脳皮質では痛みとして感じるのです。この痛みには慣れというのがありませんので、その刺激がなくならないうちは痛みもとれないのです。

そして、このはじっこから大脳皮質までの連絡路がなにかの原因によって切られたばあいには、はじっこがどんなひどい状態になっていてもちっとも痛みは感じないわけです。

また、意識のないときも痛みは感じないものです。

いま述べたように、人の体には体中に末梢神経の末端(はじっこ)が張り巡らされております。

そして、その末端部には痛みの受容器がついております。

この受容器に痛みの刺激が加わると受容器の透過性が変化して脱分極して興奮を引き起こします。

この興奮が活動電位として求心性神経線維を伝わって(伝導)、中枢神経に伝わります。

中枢神経に伝わった興奮は脊髄・脳幹部を経由して、視床を通って大脳皮質に到ります。

ここ大脳皮質で”痛み”として感じるわけです。

2,痛みの種類は?

大きく三つに分けられます。

  A) 末梢性

  B) 中枢性

  C) 心因性

3,末梢性の痛みは?

   末梢性疼痛ーーー→体性痛ーーーー→表在痛
                  l                            I
                  l           l
                                     lー→内臓痛      lーー→深部痛

4,表在痛とは?

皮膚の痛みです。

針を刺したときの痛みのように鋭い痛みとして感じられます。

受容器は神経自由終末です。

表在痛には鋭い痛みと鈍い痛みの2種類があります。

痛みを起こす刺激には機械的・熱的・化学的・電気的刺激があります。

5,深部痛とは

筋肉・筋膜・骨膜・靱帯・腱・関節や結合組織に発生した痛みです。

受容器は神経自由終末になっております。

感覚は持続性・広範囲の鈍痛です。

肩こりや筋痙縮性頭痛を引き起こします。

痛みを発する物質はヒスタミン・アセチルコリン・キニンなどがあります。

6,内臓痛とは?

内臓・腹膜・胸膜に生じた痛みです。

内臓の受容器からの興奮(情報)が大脳皮質に伝わって内臓痛を感じるようになります。受容器は自由神経終末です。

胃・十二指腸潰瘍や虫垂炎または腹膜炎などで痛みを感じます。

内臓受容器には次のようなものがあります。

 
循環系 圧受容器:頸動脈洞・大動脈弓にある(血圧を感知) 
伸展受容器:心房(血液量を感知) 
侵害受容器:心臓(虚血によって心臓痛を感じる)
呼吸系 化学受容器:頸動脈小体(血中のCO2・O2の分圧を感知する。)
侵害受容器:気管(咳・くしゃみを引き起こす)
機械受容器:肺(呼吸反射に関係する)
消化系 機械受容器:胃(満腹感)直腸(便意) 
化学受容器:消化管壁(満腹感) 
温寒刺激:食道・肛門 
痛覚:すべての腸管
泌尿器系 機械受容器:膀胱(尿意)腎盂・尿管(疼痛)
 
7,中枢性疼痛とは?

神経が障害されたときの痛みです。

  イ、末梢神経障害ーーー神経炎・外傷

  ロ、脊髄障害ーーー腫瘍・炎症・脱髄・空洞

  ハ、脳幹障害

  ニ、脳障害

8,心因性疼痛とは?

精神的に不安状態にあるとき、からだの調子が悪いとき、

うつ状態のとき、起こりやすくなります。

また、高血圧・消化性潰瘍・大腸炎などにともなっておこる場合もあります。

9,関連(連関)痛について

ある内臓の障害が一定の皮膚に痛みとして感じることがあります。

これを関連痛といいます。

これは内臓からの求心性神経線維と皮膚からの体性求心神経線維がおなじニュウロンに連絡することから生じるものです。

たとえば、お腹の病気のときに背中が痛くなります。

それもお腹の臓器によって痛くなる場所が決まっております。

また、狭心症の時には右の肩の痛みとなって現れるのはよく知られておりますね。

 
10,痛みの治療法
非麻薬性鎮痛薬 作用:末梢侵害受容器 
鎮痛作用 
アスピリン他
麻薬性鎮痛薬 作用:オピエート受容体 
強い鎮痛作用 
モルヒネ他
向精神薬 鎮静作用 
トランキライザー・抗うつ剤
局所麻酔剤 作用:侵害受容体と神経遮断 
神経ブロック・局所の手術に利用
物理的方法 熱・寒冷・電気刺激など 
運動療法 
神経外科的方法
心理学的方法 心身の安静・瞑想・催眠など